チーズに乾杯

屋上にある遊園地に行きたい、という理由だけで待ち合わせは蒲田だった。

はじめての街に降り立つとき、少しだけ緊張する。賑わう駅を抜け雑多な建物のあいだをくぐると、中途半場な広さの空が見えた。ざわざわとうごめく人波を縫って歩く。無秩序に並べられた駐輪場の自転車たち、同じ店ばかり示す電柱の広告。冬の日差しがぼんやりと溶け込んでいて、好きな空気の街だと思った。


おめあての屋上遊園地は、思った以上にミニマムでかわいらしかった。一周30秒くらいで終わっちゃうんじゃないかと思うほどちいさな観覧車に乗り込む。4人乗りにぴったり4人。大正解だった。たぶん、1分は乗っていた。

ハム太郎アンパンマンの乗り物遊具を見つけて、周りをぐるりと歩いてみる。ミニマムなかまたえん(という名前の遊園地だった)は一瞬で制覇できてしまって、そっと屋上を後にした。

 

横幅が狭い商店街を歩く。帽子屋さんで小さい子が被るようなくまの帽子を被ろうとしたけれど、わたしの頭には入らなかった。そんなに頭でっかかったっけ、と思ったところで「キッズ用」という注意書きをみる。すみません、はい、24歳児です。

あてもなく歩いて、公園の遊具にぶら下がる。はしゃぐ。笑う。お腹が空いたね、と言って、行ったことはないけれど知っていたピザのお店に行った。
これだこれだ、とでかいピザを頼む。本日のピザと、チーズのやつ。ほんとうにでかいピザだったので、4人でシェアして食べた。大正解だった。
よし飲んじゃいましょう、と昼間からビールを飲んだ。小ぶりなグラスに入ったホワイトベルグはしゅっとなめらかで、ピザとよく合う。たくさん笑って、お互いの馴れ初めや出会いの話をした。

 

出会ってからの期間が短くたって、親しくなるのに関係ないのだということをここ最近めきめき実感している。
心地のよい空気をまとった人とする会話のリズムはほんとうに気持ちがよい。抱きしめたくなる時間を抱きしめながら、出会えてよかったなあ、とじんわり考える。

ランチタイムをまるっといただいて、店を出たあと屋上を探して歩いた。知らない街をぐるぐると歩く。できるだけ空の近くに行こう。光が差してくるところがいい。遮るものがないところ。地上から離れたいね。お日さまに近づこう。目的地が決まっていない、やさしい散歩だった。


呆れるほど地理に弱いので道はまったく覚えていないけれど、蒲田の街を、今は少しだけ知った気持ちになっている。

 

またかまたえんの観覧車から富士山を見て、でかいピザを食べたい。
同じ広告ばかりの電柱を見て、うんざりしたい。

 

線路沿いのフェンスをたどって帰った。完結なんかしない毎日がいとしかった。