NY旅行記vol.1 〜出国・入国編〜

我らの永遠のバイブル、『BANANA FISH』。

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1985〜1994年に『別冊少女コミック』で連載された漫画作品。原作者・吉田秋生の40周年記念プロジェクトとして、去年2クールに渡ってアニメが放送された。 

 

9月、遅めの夏休みをもらって『BANANA FISH』の舞台であるニューヨークまで行ってきた。去年全24話のアニメを視聴し泣き崩れたあと、気がついたら漫画全巻セット(番外編つき)を購入、原画展に足を運びアニメ設定資料集から原画集を揃え手にとっては眺め、という日々を過ごしていたらいてもたってもいられなくなってしまったのだ。(ただしい大人買いができるから大人になってよかった)

同行者は、大学時代からのマブダチMと、Mの元同僚Kちゃん。Mは職場でオタクであることをひた隠しにしているので(たぶんバレてるだろと思うけど)、同僚とバナナフィッシュの話ができたことがうれしすぎたらしくうっかり引き合わせていただく運びとなった。わたしとKちゃんもあっという間に仲良くなり、原画展にも3人で行った。

最初は冗談だった「ニューヨーク行きた〜い」が、ガチガチに本気(マジ)の「まって。ガチでニューヨーク行きたくない……?」に変わるまでそんなに時間はかからなかった。いよいよニューヨーク行きが決まってからはそのために働いていたと言っても過言ではない。まわるべきポイントをチェックするためアニメも漫画も復習しまくり(そのたびに繰り返す嗚咽)、設定資料集も舐め回すように読み返した。

バナナフィッシュ聖地巡礼ツアーの開催が公式で発表されても、「時間決められて行動するなんてアッシュ・リンクスの聖地に行くにはふさわしくなくない?」という本気(マジ)な意見しか出なかったほど、ガチガチの本気(マジ)だった。自力で行くからこそ意味があるんじゃん、と強気で航空券を買い、ホテルを予約。あのときのガストでの震えを武者震いと呼ぶんだと思う。

そんなわたしたちのニューヨーク旅があまりにもスリルとサスペンスに満ち、たまに泣いてしまうくらい楽しく尊く、そしてまぶしいものだったのでここに記しておきます。1ミリも忘れたくないので。

 

MとKちゃんに、心より感謝を込めて。

 

*****

 

出発日。どうして今日が〆切! という仕事を午前中に片付け、職場のみなさまに見送られて成田空港へ。ちょっとバタバタしながらもMとKちゃんと合流し、両替を済ませてチェックインカウンターに行くまでは順調だった。そう、ここまでは。

カナダを経由してニューヨークに行く予定だったので、まず成田からモントリオールの航空券を発行すべく自動発券機を操作した。しかし、何度番号を打ち込んでパスポートをスキャンしても出てくるのは「eTAが登録されていません」の文字。

?? なにこれ? 「eTA」って、なに???

じんわりと感じる不穏な空気。まって、なんか、やばくない??
こんなところでつまずくわけにはいかないので、チェックインカウンターのお姉さんに恐る恐る、なんですのんこれ?と尋ねる。お姉さんはきりりと表情を引き締め言った。

「お客様、eTAの申請はされましたか?」

だからなんですのんそれ!?!? イーティーエー??? ETCしか知らないですけど!?!?

「「「し、していません……!!」」」

サッと腕時計を見るお姉さん。バッと顔を見合わせるわたし、M、Kちゃん。え、もしかして、やばいっぽい?

「こちらで今すぐ申請してください。搭乗手続きはまもなくですので急いで!」

やばいっぽい! お姉さんの気迫がすごい。まったく笑顔を見せくれない。お姉さんに教えてもらったURLからeTA申請のサイトへ飛んで必要項目の入力をした。どうして全部英語なの!?!?(カナダだからです)

eTAはオンラインビザで、カナダに入国するとき必ず申請しなければいけないものらしい(トランジットでも必要とのこと)。血眼になりながらスマホをにらみ、なんとか申請を終了。ドッキドキだったが一瞬で承認がおりた。
よ、よかった〜〜〜!!!!やだもう、こわ〜〜〜〜!!!!胸をなでおろしながらふたたびお姉さんの元へ。キャリーケースを預け、航空券をもらう。
申請通ってよかったです。はじめて微笑みを浮かべてくれたあと、お姉さんはこう続けた。

「お客様、ESTAの申請は済ませておいでですか?」

えっ

???

えすた……?? って、なに………?????? エスター?

 

f:id:neeey:20190918161627j:imageエスター

 

「はい」

まさにエスターみたいな表情になったわたしとは裏腹に、間髪入れずにこやかに返答するM。えっ、マジ? わたしはじめて聞いたよ??? おまえ、ESTA知ってんの???? マ????(心のギャル)
そっとKちゃんと顔を合わせる。エスターみたいな顔をしていた。よかった、どうやらKちゃんはわたしと同じことを考えている。しばし停止したあと、Kちゃんはなにやらすごい速さでスマホを操作し、指を止め、そして画面をこちらに向けた。

受け取って、のぞき込む。

 

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やばいやつじゃん!!!!! わたし申請していません!!!! これ最悪アメリカ入国できないのでは!!!!! M知ってたの!?!?!?!?
動揺と混乱を悟られないように各自お姉さんから航空券(成田→モントリオール行き)を受け取る。足早に税関へ向かいながらはじまるMへのESTAってなんなのタイム。

「まって、マジでまって、ESTAってなに?わたし知らんかったんだけど!!」ほぼ競歩のまま問いかける。「わたしも」うなずくKちゃん。すると、Mはキリッとした顔でこういった。

「わたしも」

はい?

「「Mも??」」

「うん。なんかよくわかんないけどうなずいとこって思ってうなずいちゃった」

はい?

「「うなずいちゃった???」」

のちに、このMの肯定が英断であったことを知る。

 

とりあえず、3人ともESTA未登録ということで謎に安心してしまい、なぜかテンションが上がる愚かなわたしたち。ウケる。ウケるよね? 逆に笑える。
だけどや〜〜ばいよ、これは申請しなくっちゃや〜〜ばいよ!!! わたしたちこのままじゃカナダ旅行になっちゃうよ!?!? アッシュに会えないよ!?!?

もうほぼ時間はない。飛行機に乗ってしまえば電波は届かないため何もできなくなる。とにかく今、いま、ナウ!!!! 血眼でスマホと見つめ合う時間、ふたたび。しかもeTAよりも入力項目がクソ多い。電話番号入力ができずつまずいたり、途端に画面がフリーズしたり、マジでヤバめ。(ちなみにわたしはたぶんこのときAirPodsを紛失した。泣いちゃう、強い子だから泣かないけど)

仕事の関係でアメリカのビザを持っていたKちゃんだけが心配そうにわたしとMを見守ってくれていた。サクサクと入力を進めるM(実は帰国子女。英語力500)と、入力項目が読めずに何度も立ち止まるわたし(英語力30)。

そんなこんな奮闘していたら、搭乗ゲートからアナウンスがかかり始めた。いよいよ焦りがピーク。え、ちょ、やばくね???

「とりあえずいちばん後ろに並ぼう」

内心バックバクなくせに表面上は冷静を保ちながら列を移動した。この列が進み切るまでに申請できなければ、終わる。こんなときに限って読み込みがめちゃくちゃかかる。まって〜〜〜!!! お願い神さま〜〜〜〜〜!!!

 

わたしたちの心の声が聞こえたのか、列はいっこうに進まなかった。ESTA申請に夢中すぎてアナウンスがちゃんと聞こえていなかったのだけど、悪天候(雷)のため出発が遅れていたのだ。神さま………いたんですね………。

なんとか申請を終わらせ機内へ。この時点で、申請が済んだだけでまだ承認はおりていない。「eTAはすぐ行ったじゃん!」だのなんだの理不尽な怒りをスマホにぶつけながら、「まあもうなるようにしかならないし出発前の写真撮ろ〜!」と横並びでぱしゃり。どこまでもポジティブなふたりがいてくれて本当によかった。あらためて写真を見返すと、3人ともムカつくくらいいい笑顔をしている。精神が強靭すぎる。

そこからも天候は回復せず、「なんか慌てなくても大丈夫だったんじゃな〜い??」なんてケラケラ笑っているうちにESTA承認の通知が届いた。か、神よ!!!!!! ありがとう、いろいろあったけどわたしたち、ニューヨークに行けます!!!!!

(たぶん、チェックインカウンターで「ESTA? 申請していません」と言っていればわたしたちは搭乗手続きを済ませられなかった。あのとき何にも動じず笑顔でうなずいてくれたMに、この旅のMVPをあげたい)

結局1時間半近く遅れて飛行機が離陸。心のそこから清々しかった。空の上で、わたしたちは機内食を食べたり映画を観まくったり、あらためてバナナフィッシュの復習をしたりして各々楽しい時間を過ごした。

この先離れ離れになる運命が待ち受けているとも知らずに-----

 

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▲調子に乗って飲んだ酒。スミノフ、こっちだったか………(飲み干した)

 

*****


お尻がガチガチになりふくらはぎがパンパンになったころ(約13時間)、カナダのモントリオール空港に到着した。伸びをしながら飛行機を降りる。出発が遅れたため乗り換え予定だった便に間に合わず、振替え便に乗ることになった。

時間がギリギリなこともあって慌ただしくチェックインカウンターを通過。搭乗手続き前にESTA確認のブースがあって、Mとわたしは堂々とそこをクリアした。Kちゃんはビザ持ちのため手続きなしでクリア。ほんと〜〜うに申請が通っていてよかった。よかった。

最後の入国審査には、M、わたし、Kちゃんの順で並んだ。パスポートを見せ、指紋と顔写真を撮り、笑顔で「サイトシーイング!」とだけ言えればいいやつ。ルンルンで審査を抜け、MといっしょにKちゃんが出てくるのを待った。

……。

あれ……ちょっと……遅く…ない………?????

ESTA承認されててマジでよかったね〜〜!と騒いでいたわたしとMが、スンと静かになる。異国のグレーの壁と床がいきなりつめたく感じた。

しばらくして、わたしたちの入国審査を担当していた鼻の高いおじさまがやってきた。

Is she your friend? 
Y,Yes…

そして告げた。彼女はESTAを持っていないからこっちに来ることはできない、と。
固まるわたしとM。なんで!?!?!? ビザは!?!?!?
入国審査手続きをしていたブースは、通路からは見ることができなかった。Where is K-chan!?!?!?

ただ、そのあとおじさんは「今からESTAの申請をするから、君たちはゲートで待ってて。彼女もすぐ行くよ」と続けてくれた。めっっっちゃびびったけど、なるほど、会えるんだ!!!という希望の光を見出したわたしたちは、Kちゃんへ「ゲート前で待ってる」とテレパシーを送りながら進んだ。

ゲートへ行くと、わたしたちの搭乗を待つクルーのひとたちがめちゃくちゃ叫んでいた。

Hurry!!!!! HURRY!!!!!!

えっ、だってKちゃんがまだ……!!!!

ものすごいジェスチャーに逆らえず、そのまま乗り込むわたしとM。振替え便ということもありわたしたちの席はかなり離れていた。相談も何もできず、混乱のままシートベルトを締める。緊張感マックスのくせになぜか離陸前に眠ってしまい、気がつけば飛行機は空を飛んでいた。Where is K-chan……?????

それから1時間弱でニューヨークに着いた。自分でもビビるほど完全に眠っていて、あわてて降りる。降りた先でMと合流し、「Kちゃんは…Kちゃんはどこ……???」とうわ言のようにつぶやいた。
乗ってる…よね……??? 希望を絶やすことなく立ち尽くすゲート前。しかし、とうとうKちゃんが降りてくることはなかった。

 

絶望-----。
まだKちゃんがここにいないという現実を受け止めきれないまま、わたしとMはキャリーケースをピックアップした。「どうしようか」を繰り返す。

「ひとまず、連絡を取ろう」
「うん」

成田で借りたWiFiはKちゃんが持っているため、なんとかして空港のWiFiをつなぎ、ラインを開いた。

 

「だれかWiFi繋がってる?」
「今のフライトじゃ間に合わないみたいなので今日は行けないらしい笑」
「だから先に行ってて!」
「明日何としてもニューヨークに行きます!!」

 

K-chan is in CANADA !!!!! Now !!!!!!!!

やっぱり、やっぱりさっきの飛行機にKちゃんは乗れていなかったのだ!!!!
ちょっと、ていうかかなりそんな気はしていた!!!!

ラインで電話もして、Kちゃんの声を聞いて安心する。とにかく連絡が取れてよかった、と二度安堵。

Kちゃんが持っていたのはビジネス用のビザだったため、「サイトシーイング!」では使用できなかったらしい。そんな恐ろしいことあってたまるかよ……。トラップすぎ……。

幸運にもすぐに次の便を取ることができたとのことで、わたしとMは先にホテルに行くことにした。かわいそうなKちゃんはひとりカナダで夜を越すのだ。なんてこと……。

空港を出てタクシー乗り場まで向かう途中、いかにも怪しいです☆な人たちがタクシーを勧めてきた。「ぼったくられるよ、新宿のキャッチだと思って歩きな」と正面を向いたままMが言う。カッッッコよ………。新宿のキャッチだと思えば全然こわくなかった。隣にMもいるし。

 

イエロータクシーに乗って宿泊予定のホテルへ向かう。当たり前だけど街並みがテレビで見たニューヨークのまんまでじわじわ感動した。ビルの明かりが夜に滲んできれいだった。

ホテルに到着。Kちゃんから送られてきていた予約画面を見せながら、Mが「予約した友人が遅れているので先にふたりで泊まる」という旨を伝えてくれる。
頷きながら操作するホテルマン。全然笑わない。
しばらくして、Mのパスポートを見たあと「NO」と言った。

ノー???

どうやら、Kちゃんの名前で予約をしているから、Kちゃんが直接ホテルにわたしたちが泊まるということを伝えなければわたしとMはチェックインすることができないらしい。

そんなこと、ある????(あった)

とりあえずKちゃんに上記の事情を伝え、わたしたちはロビーで待機することにした。
カナダからニューヨークへの国際電話をかけるため奮闘するKちゃん。マジでごめん。ひとりぼっちで空港に閉じ込められている彼女のことを案じながら待つことしかできない自分たちが歯がゆかった。

すったもんだの末、なんとかチェックインを完了!(Kちゃんほんとにありがとう!!!)

やっと入室できたときには、現地時間で24時をまわっていた。

「ついた〜〜〜〜〜〜!!!!」

叫びながらベッドにダイブ。横たわるの何時間ぶりでしょう……。
いろいろ起こりすぎてむしろハイになっていたわたしたちは、いまさらお腹がペコペコなことに気がついてしまった。

食料を買いに行きましょう、ということで近くのコンビニまで散策。ポテチにコーラにハーゲンダッツという最高にジャンキーな夜食を購入した。あとは常備ビーンズと常備ナッツと称したでっかいビーンズとナッツも。アメリカっぽい!!!(バカ)

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▲2人分しかない悲しみのハーゲンダッツたちと、せめてものカナダドライ

 

ホテルに戻ってシャワーを浴びたあと、お腹を満たしながら明日以降の観光をどうしようか相談した。ひとまず最大のミッションはKちゃんと合流することなのですが。

果たしてわたしたちは無事3人でニューヨーク観光ができるのか-----????

 

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▲カナダ・モントリオールについた頃。悲劇が起こることを、この頃のわたしたちはまだ知らない 

 

 


※ありえないほど長くなったため、続きます。次回こそニューヨーク編!!!!