ローソンのメガアイスカフェラテ

ぼやぼやしている間に夏になった。暑くまぶしく気だるい夏。去年の今頃「来年の夏もマスクは必要なんだろうな」と考えていた以上に、わたしたちはまだ終息の気配のないパンデミックの真っ只中を生きている。

 

中止になるフェスがある中、オリンピックが始まった。いちいち感情を動かしていたらどうにかなってしまいそうだから、日々淡々と仕事をこなしている。幸か不幸かやることはたくさんあって、毎日は飛ぶように過ぎる。おととい上司から「無理していないか」と真剣に話をふられて、きょとんとした顔をしてしまった。なにかヤバいミスをしてしまったのかとオロオロしたけど、そうではなく、ただ単にわたしの業務量を心配しているだけだという。「大丈夫です」と答えながら、最近あまり会社に来ない後輩のことを考える。大丈夫かなあ。

 

転職から1年と3ヶ月が経って、気がついたら部内の諸々を統括する立場についていた。給料もすこし上がって、毎月のカードの請求にヒーヒー言っていたわたしはもういない。この間、ちょっと大きな買い物をして一括で支払いをすませたとき、そのことを特別にすら思わない自分にちょっとびっくりした。2年前、かなり自分を裏切るかたちでお金を稼いでいたことを忘れたわけじゃない。まわりに迷惑をかけないことばかり考えて、でも自分も救われたくて、その末選んだ手段だった。あのときの自分はずっと許せないし、背負っていこうと思っているけど、それでももうある程度過去として少し遠ざけてもいいのかもしれない。

 

あまりに忘れたいことだったから、誰にも言わなかったし、言えなかった。日記にも書かなかった。こうやって少しずつ、ぼんやりと過去を精算していくことが生きていくことなんだろうか。このまま誰にも言わずわたしが忘れてしまえば、記憶の完全勝利になるんだろうか。

 

夏はいつも、ちょっと無理やり元気をださないと気持ちがぺしゃんこになってしまう。あぶないと思ったらほっぺを叩きながらいこうと思う。

心と体のバランスがとれなくなるたび、大丈夫、夏を生き抜けば大丈夫、とおまじないのようにつぶやいている。大丈夫、大丈夫。夏のどこか刹那的な空気が、怖くなくなることはたぶんないのだから。