エンドラインを飛び越えて

11月24日、第29回文学フリマ東京のこと。
いつもに増して一瞬で時間が過ぎてしまった気がする。来てくれた方も、遠くから応援してくれていた友達も、みんなほんとうにありがとうございました。

 

ネネネとアベハルカの短歌なふたりぐみ、meri-kuuの参戦は5度め。なんとなく文フリの空気みたいなものは分かるようになってきたものの、当日はほかにも大きなイベントが重なっていたし、入稿はギリギリだし告知は遅くなってしまったしで実は「全然来てもらえなかったらどうしよう」とめちゃくちゃにおびえていた。行きの電車の中、両手で抱えるずっしりとした本の重さがそのまま不安になって、この重さを抱えたまま帰ることになったら……なんて嫌な予感がむくむく大きくなる。出店の回を重ねるごとに、なんとなく「前回を超えなくては」という気持ちになってしまっていたんだと思う。何と闘っていたんだろう。

 

そんな不安をかき消すように、開場と同時にたくさんの方がブースに足を運んでくれた。わたしたちのところに来るために遠方から前泊までしてくれた方や、お友だちを引き連れてきてくれた方、布教用に2冊ずつ買いますと言ってくれた方がいた。見本誌にひかれて来ましたと声をかけてくれる方や、並べているものすべて買ってくれた方、サインをくださいと言ってくれた方がいた。うれしくて何度もよろめいて(荷物がやたらめったら多くて椅子のうしろにまとめて置いていたから、立ち上がるたびにがちゃがちゃしてしまった)、手がふるえて喉の奥がちょっとグっとなった。ネネネです、と名乗るたびに噛んでごめんなさい。口に出すと言いにくい名前にしたのは自分なんだけど、呼んでもらえてとてもうれしかったです。ほんとうにありがとうございました。
(鬼滅の話とかバナナフィッシュの話とかしてくれる方もいて、!?ってなりながらものすごくよろこんでました……よ、読んでくださってたんですね………!!!ひゃ〜〜〜)

 

今回のわたしたちの新作は、ネネネとアベハルカがそれぞれ30首ずつ編んだ連作とエッセイを1本ずつ収録した『ひからないデッドエンドの世界でも』。

f:id:neeey:20191129191014j:plain

f:id:neeey:20191129191026j:plain

今までよりもすこし小さなB6サイズに、今までのような写真やいっぱいのイラストや手書きの文字は使わず、シンプルな装丁にした。すこしざらりとした手触りに金色の紐が背表紙でひかる、とてもうつくしいZINEになったと思う。お気に入りの自信作です。

そして今回、はじめてひとりでZINEをつくった。短歌条例を25本まとめた『雑踏の祈り』。2017年から合わせたら60本近く短歌条例をつくっていて(数えてびっくりした)、その中から25本自選しました。

f:id:neeey:20191129191304j:plain

一度入稿締切をキャンセルしてやり直したくらいギリギリで(課金して時間を買った)、ほんとうに終わらないんじゃないかと思った。入稿したあと、不安すぎて印刷会社の人に2度も電話してしまったくらい(すいません)。やさしくてものすごく安心した。

 

そんな新刊2冊は、いままででいちばんたくさんの人に届けることができました。
さらに、既刊としてならべていた『playlist』は両手で数えられるほどしか残らず、『夢にみるほど日々だった』『ルーパスト・ヒーロー』は売り切れた。びっくりした。あの数が、なくなったんだ。隣に座る、大きな目をもっと大きくしたハルカちゃんと顔を見合わせて、「売り切れたよ」「売り切れましたね」という会話をした。ほんとうにびっくりした。うれしかった。

f:id:neeey:20191129191512j:plain

『ひからないデッドエンドの世界でも』、『雑踏の祈り』、アベハルカオリジナルiPhoneケース(短歌つき)はBASEで通販スタートしています。

 

また、ZINE2冊は吉祥寺の古本屋、百年さんにも置いていただいています!
買い逃したよ、行けなかったよという方、ぜひぜひ。


meri-kuuのいままでの活動はこちらのHPでチェックしてみてください〜

merikuu.myportfolio.com

告知などはTwitterがメインだけど、ちょこちょこ更新しています。

 

 

*****

 


そして、ちゃっかり欲望に忠実な狩りをしたので戦利品は大漁になった。みてくださいこちら。しあわせの化身です。

f:id:neeey:20191129192303j:plain
(今回はmeri-kuu共同財布から買い物することを許し合ったので、ガチで値段を気にせずに買い物をしました。「これとこれとこれ、ぜ〜んぶください!ができるのソーハッピー……!!!!!)

 

yoeちゃん、伊藤さんとゆかりさん、僕のマリさんの並ぶブースにはどうしてもハルカちゃんとふたりで行きたくて、何のアナウンスもなくそっと自分たちのブースを無人にして出向いた(その時間に来てくれた方いたらほんとごめんなさい)。楽しみにしていた本を受け取ることができる瞬間がなによりもしあわせ。おまけもたくさんもらってしまった。

 

yoeちゃんの『ゆめ10夜』。これは夜に読むべき一冊です。最高。yoeちゃんの文章だいすきすぎて前回の文フリで出していた『身元不明』の感想をまるまるっとブログに載せるという暴挙に出たことがあるくらいなんですけど、やっぱり最高だった。『ゆめ10夜』、通販はじめるとのことなので買い逃した人はぜったいに手に入れるべき。わたしも夢日記つけたいな!と思って、読んだ翌日にめっちゃがんばったんだけどだめでした。夢を記録する才能がない。(ちなみに今日は「どうしてできないの?」と上司に詰められながらピザ食べる夢でした。つらくない?)

 

僕のマリさんの『まばゆい』。まばゆかった。読んでいてキュウと心臓が痛くなる。確か水曜あたりの夜に読んだんだけど、一度で消化しきれずに何度も読み返してしまった。完全版もたのしみです。通販ももうなくなってしまったようですが、電子版の販売があるそうなので要チェック。

 

伊藤さんの見るゆかりさんとの日々、とても好き。noteでも読んでいたけど、こうして紙になるとさらにいいな。他人の生活を覗き見している気持ちになってしまう。
伊藤さんとyoeちゃんの『まちぎき』、伊藤さんと僕マリさんの『ハッピーサマーブルー』はこれから読みます。このサイズの本は持ち運びしやすくてうれしい。通勤で読もっと。

 

初谷むいちゃんと横井もも代さんの『朝になっちゃうね』。ZINEと小説2編のほか、「花に泡」のキーホルダーもゲットしました。どこまでもすてき。小説は我慢できなくて帰りの電車の中で読んだ。すごく好きでした。とくに201号室の、入浴剤ぜんぶ入れちゃうところたまらなかった。

 

『36.5度の夜』。noteでよく読んでいたしをりさん(はじめましてできた!)やエリオさんのエッセイがほしくてウキウキでブースに行ったら、エリオさんもわたしのことを知っていてくれてうれしびっくりでした。挙動不審人間になってしまった……。お話できてうれしかったです。大切に読む。夜に読みたい。つきのさん、ちゃこさんのnoteも読んでいて好きだったのでとってもうれしい豪華アンソロジー

 

そして市ヶ谷さんの『失恋防止マニュアル』!!
ちょうどブースに行ったときに市ヶ谷さんは不在で、「ありゃま〜残念!」と思ったのだけど、そのあと会場でばったりお見かけしてわ〜いと突進しました。髪色がきれいで目立つのですぐわかりました、と言ったら笑ってくれてきゅん。『失恋防止マニュアル』はnoteで読んでいてすでにだいすきだったけど(というかもうタイトルがずるいよね、読むに決まってるよね)、紙だとさらにマニュアル感がアップしてもっと最高でした……。北枕ふか子さんのデザインもとっても良い。ラストに向かっていくあの感じ、読んでいてウッとなったのはわたしだけじゃないはず。
それにしても失恋防止がほんとうにできない……。うっかりしてるのでほんとうに……。好きな人を歌にしない………。はい………。………。

 

いつか床子さんのガチャは迷わず10回を選んだ。お待たせしてごめんなさい!といつかさんはおっしゃっていたけど、その時間もふくめて楽しくてすごいなって思った。そもそも100本も短編が書けるのすごすぎるな……。毎日寝る前にひとつ読んでいます。

 

ぼくいずみさんの『記憶は空っぽ』
最後の1冊をゲット!!!!やったぜ!!!!ぜったい欲しいと思っていたのにうっかりブースに行き損ねていて、ハルカちゃんが持って帰ってきたのをみて(ひとりずつブースを守りながら買い物してました)速攻で出向きました。買えてよかったほんとうに……。ありがとうございます………。
タイトルをそのまま再現したようなデザインで、めくるたびに忘れたことを思い出す気がした。何を忘れたかはもう思い出せないけど、記憶があったこと。空っぽになる前のこと。すごく素敵だった。

 

ぬばたま4号。毎号たのしみにしています!

行くねって言えばかならず行くからねはためく洗濯物をほうって(佐々木遥「途方のない人生」)

 鍵もかけずいますぐ駆け出してしまいそうな、だけどどこか物語的な情景が浮かびました。すごく詩的。リズムもきれい。

葉が一つ落ちてどこかのバタフライエフェクトぼくらそのうちに死ぬ(松岡礼慈「狂いなく」)

 バタフライ/エフェクトの句跨りが好きです。下の句の淡々とした感じも。この歌連作の最後の一首で、あ〜いいな〜と思った。

受領証渡し忘れて日が暮れて みんなそれぞれ海をみつけて(中野 霞「メイドインチャイナ」)

「みんなそれぞれ海をみつけて」、生きづらさを感じる連作の中で息継ぎのようだった。じっとしていてただ時間だけ過ぎていく毎日でも、海をみつけて。

あ〜好き……最近歌会などからっきしで全然評に触れていなかったのでぐんぐん吸収できた気がします。ななめ前のブースだったのでいつでも買える!と思っていたらタイミング逃しそうになった。あぶないあぶない。

 

前回meri-kuuで表紙を描かせていただいた創作メルティングポットさんの新刊『complex anthology』!
まず文フリ前日に、オサナイさんが書いたnoteを読んでぐわ〜となってまして……17時ギリッギリ、もうブースのお片づけをはじめているタイミングに押しかけて買わせていただきました(ありがとうございます!!)。わたし自身コンプレックスのかたまりなので読んでいてジリジリした。救われる人がきっとたくさんいると思う。

 

『綠靑文庫』(ろくしょうぶんこ)は超キュート短歌アンソロジー。ブースの番犬、ジョンがかわいくて笑っちゃった。

直前で咄嗟に定期を持ち替えるこれは右利き用の改札(神丘風「たんぽぽの名産地」) 

連作通してずっと苦しくて、この歌でハッとした。左利きという言葉は出てこないけれど主体が左利きであることがわかる。ちいさな違和感が丁寧に描かれていて、何度も読み返してしまった。タイトルがすごい。

ラパンとかポロとかいった軽々しい名前の車でさらっていって(小泉夜雨「アイラブ・サブウェイ」)

小泉さんのカタカナの使い方がすごく好きなんだけど、とくにこの「ラパンとかポロとか軽々しい名前の車」ってものすごくよくないですか……歌詞にしたい。うたってほしい。

ふぇるまーた長い旅だねもう君が 君がおわりを決めて良いんだ(深原滄「うたうたうたう」)

フェルマータをこんなにうつくしく歌にできるのか、と思った。「君が 君が」の余白がぴったりだなと思う。余白、余韻、好きです。

 

あといとこんさんの快楽図鑑、完売してしまったので通販お願いしました……ばかやろうすぐに買いに行くべきだった……!!


まだまだ読みきれていないもの多数なので、じっくり時間をかけて読みます。時間かかっても感想あげられたらいいな。

 


*****

 


文フリ終了後は、ハルカちゃんとふたりでおつかれさまパーティーをした。
なんだかんだ出店をはじめたころから当日は終わったあとに誘っていただいて何人かで打ち上げをすることが多かったので、ふたりで打ち上げをするのははじめて。(何日かたってから利益分で飲みに行ったりディズニーに行ったりはしたことあるけど)

帰りのモノレールのなかで撮るツーショットがいつもすっごく楽しそうで見返すたびににやける。

すこし真面目な話もして、そのあとはひたすらハッピ〜にカラオケ。ハルカちゃんの歌を聴くと、マジでうっかり泣きそうになってしまう。弾き語りも最高なのでぜひ聴いて、ほんとうに最高アンド最高なので……。(感情たかぶったとき語彙力レベルめっちゃ下がっちゃうのなんなんだろう。感情のバグ?)

そういえば、わたしたちはこの日前日に買った色ちがいの靴下を履いていました(仲良しでしょ)。気がついた人いたらmeri-kuu検定1級です。すごい。

f:id:neeey:20191201212435j:image

騒いで歌って食べて飲んで、じゃあね!と言い合って渋谷で解散した。ハルカちゃんのバイバイのときの手の振り方がすごくすき。

 

ひとりになった帰りの電車の中で、送ってもらったメッセージを読んだ。もうすでに読んでくれた人までいて、ありがたいなあと思いながら文フリの余韻にひたる。届いたんだな。すごくうれしかった。

きっとこれから、まだまだ知らないものに出会うんだろう。ひからなくてもいい。行き止まりでもいい。見つけてもらおうなんて思わない。誰がなんと言おうと、わたしたちはここにいたから。

 

f:id:neeey:20191201213630j:image

special thanks:chisako

 


ささやかなおめでとうだね ひとりではたどり着けない未来の続き