ツイてない日記

朝。金曜日に落とした定期を飯田橋の遺失物センターまで取りに行くところから1日がはじまった時点で、ちょっと危ない日だという予想は立てておくべきだったのかもしれないと、今日を終えかけている今は思う。

そもそもこの定期を落としたときも、落とした翌日の出かける直前に定期がないことに気がついて、どしゃぶりの雨のなか駅と家を往復したり駅員さんに聞いたり交番に行ったりと散々だった。結局落とした定期は交番に届けられていてほっとしたけど、わたしがたずねたときにはすでに交番から遺失物センターに運ばれたあとで、月曜日、つまり今日じゃないと取りにいけない状況だった。あとなんかスマホも落として画面が割れた。(ぜんぶ自分が悪いですが)

遺失物センターが開くのが8時半からで、会社の始業開始が9時45分だから、出勤前に定期を取りに行くのはちょっとしたミッションだった。やや遠回りにはなるが行けるよな、と思っていつもより10分はやく家を出る。それなりに混んでいる電車に揺られて、目的地についたのは9時だった。まあ大丈夫、チャッと定期を受け取れば、そこから会社までは20分もない。余裕だ。

幸いセンターでは順番待ちをしている人はわたし以外いなくて、すぐに窓口に案内された。交番でもらっていた遺失物番号が書かれた紙を渡す。窓口のお兄さんが確認しながらパソコンを操作してくれる。

「あ、24日夜に落とされた定期ですね~」
「そうです~」
「は〜い……。あれ、これ◯◯交番(最初に定期落としてないか聞いた交番)にあるみたいです」

えっ?

「その交番でこの紙もらったんですけど……」
「えっ……ちょっとまってくださいね……はい、いえ、でもやっぱり、そこにあるみたいですね」

えっっ!?

「そう……ですか……」

なんだこれミルクボーイか?????

汗が首筋をつたう。朝でもちょっと歩けば暑い季節になったんだな、と見当違いのことを考えながら、わたしは言った。
「つまり、えっと、ここに定期はないんですかね?」

マスク越しでもわかるほど悲しそうな顔で、お兄さんは「そうなりますね」と答えた。

「そう…なりますよね……」
思わず復唱。ないものはない。しょうがない。
「じゃあ帰りに受け取ります、最寄り駅前の交番なので!」
じゃ!と元気に退散しようとしたら、お兄さんは悲しそうな顔のままこう続けた。
「あ、おそらく交番にあるのは午前中のみだと思います。午後からは◯◯警察署のほうに移動になりますので……」

なんで?????(なんでもらしい)

たぶんわたしもマスク越しでもわかるほど悲しい顔をしていたんだろう。
お兄さんは「一応交番のほう聞いてみますね!」と言ってくれたが、すでにわたしには出社ミッションのタイムリミットが迫っていた。あと5分後の電車に乗らないと遅刻する。

「あ!大丈夫です!わたしもちゃんと確認してなかったかもしれないので…!明日そちらに取りに伺います。ありがとうございました!」

すみません電車の時間が、なんてシンデレラみたいな捨て台詞を残し、やや駆け足でセンターを出た。悲しかったが、とりあえず今は電車に乗らないといけなかった。

 

定期がないので、駅で切符を買う。どこからどこまでがいくらなのか、もうすっかり忘れてしまった。路線図を見ながら目的地を探す。焦る。ギリギリで電車に間に合って、とりあえずもう会社に行ってしまいましょう、と汗を拭いながら思った。とりあえず定期の所在はわかっているのだから。

オフィスにつく。エレベーターに乗ろうとして気がつく。

カードキー、家や!!!!!!!!!!!

これはもう、誰がなんと言おうと完全にわたしが悪い。ただのアホ、間抜け、ポンコツ、持ち物の管理もできないなんて社会人何年目ですか???????????????

この時点で時刻は9時半だった。立ち尽くすゲート前。こういうときに知っている人がぜんぜん通らないことを、わたしは今までの経験上知っている。

(よく映画とかである、めっちゃ大変な仕事をなんとか徹夜でやりとげて、上司に「明日の◯時までにこの荷物(超重要なやつ)を▲▲に届けてね!」と言われた主人公が、徹夜明けの帰りにうっかり友だちに会ってお酒を飲んでしまって、うたた寝したら寝坊ギリギリで起きてなんとか遅刻はせず出社してホッとしたタイミングで電話が鳴って「ねえ……荷物(超重要なやつ)届けてって言ったよね……?」「ハッッッ(顔面蒼白、そして嫌なときに流れるBGMがかかる)」みたいなフラグをきれいに回収しちまったな、と思った)

が、残念ながらわたしはお仕事映画の主人公ではないので、スマホからビル来訪者用ゲストカード申請フォームを開き、自分自身を来訪者としてご招待することにした(この間5秒くらい)。我ながら「やるやないの」と思ったけど、このシステム、入社したときに口頭で聞いていただけで実際にやったことがなかった。ぶっちゃけ自分をご招待なんてやっていいのかも不明(OKでした)。パスワードとかなんちゃらIDとか全然わからない。えーいままよ!と初期パスワードを打ち込んだらいけた。神様。

ゲストカードをかざし、エレベーターに乗り、会社のある階に到着。ここまで長かった……。でも完全勝利!!!とドアを開けようとしたところで、ゲストカードではエレベーターのゲートは突破できてもオフィスのドアの施錠はできないことを知った。(そうだよね他の会社さんも入ってるもんね……)

敗北。上げて落とすタイプの敗北。ボロボロのわたしに、もう打つ手はなかった。時間もHPも、なにもない。最後の力を振り絞って、受付の内線で部署に電話をかけて「ドアを開けてください(カードキー忘れました)」と告げる。完全にわたしの負けです。ダンサー・イン・ザ・ダーク(言い過ぎ)。

遅刻はしなかったもん!と思ったけど、席についたのは9時46分だった。ふつうに負けだよ。完全に負け。なにが「もん」だよ。

どっと疲れたが、あれよあれよと仕事をして1日が過ぎた。あまりに怒涛の始まりだったのにたいして、後半はとくに飛び抜けていいこともわるいこともなかった。むしろ帰り道、電車を降りたら雨が降っていて濡れながら家路に着いたから、総合的にみれば普通にツイていない1日である。なーーんてこった。

いや、わかってる、わかってますよ、ちゃんと確認をしなかったわたしが悪いし、そもそももう少しはやく家を出ろよって感じだし、カードキー忘れるのはほんとうにただのポンコツ。いろんな「もう少し」が重なり合った結果だってことはわかってますよ、ええ、でももう過ぎたことはしょうがないので、しょうがないです(日本語が下手)。

とりあえず、明日無事に定期を取り戻すまで、わたしのミッションは終わらない。ぜんぜんインポッシブルでもないミッションだっていうのに手こずっていて笑ってしまう。

 

こうなったらもう、来年の7月27日は嫌でも最高な日にしてやろうと思う。日記にはいつも、ちいさな決意と願いがこもっているのかもしれない。

『ハイキュー!!』完結に寄せて

ハイキュー!!』が完結した。

8年半の連載の終結。最終話更新の0時より前からTwitterには関連ワードがトレンド入りし、ジャンプアプリは回線が混み合ってなかなか読み込めず、そのどれもが『ハイキュー!!』の人気を物語っていた。ほんとうにたくさんの人がこの作品を愛していたんだな、としみじみ思う。

 

わたしが毎週ジャンプを読むようになったきっかけも『ハイキュー!!』だった(作品の終焉にかこつけて感想を通り越した自分語りをするのはこっ恥ずかしいしあんまり好きじゃないんだけれど、今回だけは見逃してほしい。あまりにも身近にいた作品だったので……)。
高校時代バスケ部のマネージャーをしていたから、スポーツの種類はちがえど『ハイキュー!!』には共感するポイントがたくさんあった。フィクションだけどとにかくリアルで、嘘のない世界。『ハイキュー!!』は、ただのスポ根青春マンガじゃなかった。
読みはじめた当時のわたしは高校3年生(高校3年生!?)で、大地さんや及川さん、黒尾さんと同い年だった。でも、すでに部活は引退していたし、日向、影山といった主人公世代はその時点でもう後輩だったから、若干先輩気分な目線で彼らのことを見ていたと思う。わかるわかる、エアーサロンバスの匂いするよね、なんて思ったりもした。
入部して、練習試合があって、合宿があって、県大会があって。春、夏、秋、冬と季節をうつろいながら確実に成長していく彼らを、わたしたち読者はあっというまに追い越してしまった。

 

それでも、実際に流れる年月のスピードはちがくても、彼らの人生は本物だった。

今でもよく覚えている。烏野が青葉城西に勝った148話、ものすごく嬉しいのと同時にものすごく悔しかった。烏野を応援していたのに、青城に勝ってほしかった。どっちのサーブもアタックも決まってほしかったけど、どっちのレシーブも取ってほしかった。烏野のみんなが勝利を噛み締めているのを見て、青葉城西のみんながギャラリーにお礼を言っているのを見て、涙が出た。

(「何がエースだ」と唇を噛み締めながら泣く岩ちゃんの背中を一緒に叩きたかったし、17巻の番外編を読んで生まれてはじめて自分で二次創作書いちゃったし、バレーにハマった瞬間のツッキーを見て引くほど泣いたし、白鳥沢戦でツッキーと日向を押さえつけるウシワカを逆に押し上げる大地さん、旭さん、田中さんの描写に心震えたし、天童の「さよなら俺の楽園」はハイキューの好きなセリフトップ5には入るし、音駒戦を終えた研磨とクロのシーン何回読み返したかわからないし、北さんのチームメイト思いなところずっと好きだし、書き始めたらきりがないです)

 

スポーツの世界に限らず、圧倒的に母数が多くなるのは勝者よりも敗者だ。頂点に立つ人なんて、一握りのうちのさらに一握り。どんなに好きでも、どんなに勝ちたいと必死になっても、その途中でだらけてしまう瞬間やあきらめてしまう瞬間、くじけてしまう瞬間はある。『ハイキュー!!』は、そんな通り過ぎたら忘れてしまうような時間を丁寧に描いてくれた。思えば、めちゃくちゃ心に残っているシーンは敗者側のことが多いかもしれない。わたし自身、勝者になったことがないというのも大きいかもしれないけれど、『ハイキュー!!』は、どんな立場の人にも優しかった。

 

それでも、最終章に入ったときはわずかながら動揺した。鴎台との試合を終えたら、ずっと丁寧に描かれてきた1年間をすっとばして、いきなり舞台が「数年後」になったから。え? 3年生一コマで卒業しちゃうの? 日向たちが先輩になってからの烏野は? 次こそは勝つと誓ったチームたちの「次」は? どうして日向はリオデジャネイロに!?!?!?

ついさっきまで高校生だった彼らが、いきなり大学生や社会人になってしまった。もはや先輩気分を通り越して親気分になっていた目線がきゅうに迷子になる。ここはどこ? あなたはだれ?? わたしはだれ?????(読者です)
そもそも春高編が終盤に差しかかるとともに、『ハイキュー!!』自体も終わりにむけて進みだしているのは感じていた。おそらく大多数の読者がそうだったと思う。でも、あまりにも想定外の方向に舵が切られたことで、その展開に寂しさとともに不安を覚えてしまった。

だけど、そんなのはすべて杞憂だった。今までしっかりと彼ら自身を見せてくれていた『ハイキュー!!』の土台は、ちょっと早送りしたくらいて揺らぐものじゃなかったのだ。

 

ハイキュー!!』が描いてきたのは、かがやかしい高校時代の青春だけじゃない。ただの懐かしい思い出じゃない。彼らの人生だ。ずっと先を見据えて、彼らが繋いできた歴史だ。「最終章」と銘打って、たしかな終わりを予感させながらもそれを上回る未来を見せてくれた。ありがとう以外の言葉が出ない。

主人公はたしかに、烏野高校の日向翔陽と影山飛雄だったと思う。でも、登場人物全員に物語があった。歴史があった。日々があった。最終話のトビラで、登場したチームの横断幕が下がっているのを見て鼻の奥がツンとしたのは、きっとわたしだけじゃないと思う。そうだよね、そうだったよね。あんなこともあった、こんなこともあった。エンドロールのように、今までの彼らを思い出す。すべて繋がっていた。そして、これからも途切れることはないんだろう。

 

ラスト、10番と9番の番号を背負う日向と影山がまぶしかった。拳をぶつけ合う後ろ姿からその正面は見えなくても、どんな表情をしているのか、『ハイキュー!!』読者はみんな想像できたと思う。こんなにも笑顔と希望があふれる最終回をリアルタイムで見届けることができて、ほんとうによかった。泣いちゃうかもな、と思っていたけど泣かなかった。さみしい気持ちを感じさせないくらいサイコーなラストを見せてもらえたことが、うれしかったから。

 

この作品のおかげで見えた景色がたくさんあった。本編は終わりを迎えたけれど、単行本の発売はこれからだし、10月からはアニメの続きもはじまる。延期になっていた原画展も開催告知がされたし、まだまだ『ハイキュー!!』の世界は終わらない。

(それでもやっぱりどうしてもさみしい、なんて書き始めたら永遠に書き連ねてしまいそうなので、いったんここで区切ることにする)

 

古舘先生、8年半ほんとうにおつかれさまでした。素晴らしい世界を見せてくれてありがとうございました。これからもずっと、大好きな作品です。

 

 

2020春アニメ備忘録

2020年の春アニメも佳境に入ってきました! 毎期おなじみの備忘録です。
(もう6月も半ばということに衝撃が隠せない、いまだに給付金が振り込まれないのですが?)

 

今クールは、放送中のアニメを追いながら空いた時間で昔のアニメを一気観するというトチ狂った生活をしていました。

僕のヒーローアカデミア』、『キルラキル』、『ドクターストーン』、『進撃の巨人』などなど……。いちばん最近放送分全話を観終えたのは『進撃の巨人』なんですけど、こんなにも凄まじい作品を観ていなかったのかよと自分を殴りました。(妹に「むしろ進撃のネタバレを知らずにここまで生きてきたのがすごい。ツチノコ並に珍しいオタクだと思うよ」と真顔で言われた)
いや、しかし、マジですごかった。衝撃アンド衝撃、ずっと「えっ」て言ってたし、ずっと口元を覆ってた。気がついたら漫画を大人買い購入していて、今日の昼過ぎ届きました。しあわせな重み。今15巻まで読んだので、とりあえずこのブログを更新したら続きを読みふけります。幸いなことにあしたは土曜日なので…。

 

さっそく脱線しちゃった! いきます〜〜

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波よ聞いてくれ

飲み屋で意気投合したおっさんに失恋の愚痴(すげー壮絶)を話したことがきっかけで、地方深夜ラジオのパーソナリティをつとめることになる女の人・鼓田ミナレのお話。

原作の漫画を2巻くらい読んだことがあるんだけど、ほとんど忘れていたので初見の感覚で観てます。
主人公がラジオパーソナリティってこともあってめちゃくちゃしゃべる、とにかくめちゃくちゃしゃべるアニメです。なんかもう、めちゃくちゃしゃべる。テンポよくて飽きずに観れます。ミツオの回おもしろかったな〜〜!

(そして完全に蛇足なんだけど、この間なぜか我が家の天井から異臭がしたとき真っ先に思い出したのがこのアニメでした。うちは最上階だしまさか…?と思ったけど、こわくて大家さん呼んで業者さんにも来てもらった。のに原因がわかりませんでした……。壁拭くようの洗剤?買ってきてめちゃくちゃ掃除したけどまだ完全ににおいがなくならないんだよね……なんなんだろう……。すいません、どうでもいいこわい話でした)

 

 

かくしごと

職業:漫画家というのをかくしてる(描く仕事=隠し事)お父さんと娘の話。
ハートフル日常アニメに見せかけてチラチラ不穏な影を垣間見させてくるタイプのやつ!

後藤先生(お父さん)の声が神谷さんだから斉木楠雄を彷彿とさせてくる。おもしろいしのほほんと観れてよいです。来週最終回か〜!

 

 

『啄木鳥探偵處』

歌人石川啄木が探偵處をひらいて難事件を解決するお話。
放送前からこれは観ようと決めてたやつ。事件自体も謎めいてるし、一話完結に見せかけて伏線だったりするので見応えあります。犯人はけっこうわかりやすいんだけど、動機だったりその後の展開だったりがなかなかしんどい……短歌がそこまで出てくるわけじゃないんだけど、当たり前のように歌を贈りあったりする場面はちょこちょこあってなんだか「オッ」と思っちゃう。短歌やってる皆さまにもおすすめです。

 

 

『BNA ビー・エヌ・エー』

ネトフリ先行配信でバーッと一気観しちゃってたので、一話ずつあらためて観て復習してます。
獣人と人間が共存する世界のファンタジー! それだけ聞くとキラキラ系な印象を受けるけど、差別や貧富の差がくっきり浮き彫りになっている作品だと思う。ある日いきなり獣人になってしまった主人公、みちるが獣人だけが住むアニマシティに逃げ込むところからはじまります。描いている内容は重いけど、ストーリー自体はシンプルでわかりやすい。
キャラデザに脚本が『プロメア』タッグです! オープニングとエンディングもめちゃくちゃおしゃれでテンション上がる!


みちる役の声優さんが歌ってるんだよ、かわいい〜

 

www.netflix.com

 

 

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今期がっつり観ているのはこれくらいかなあ。

あ、あと引き続き『あひるの空』、2nd season始まった『フルーツバスケット』、再放送の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も観てます。延期になってたヴァイオレットの映画はそろそろかな? 前売りムビチケなくさないようにせねば……

富豪刑事』も観てたんだけど、コロナの影響で延期してしまって、7月クールでやっと観れるのでたのしみ〜!

 

 

では。ちょっと『進撃の巨人』を読んできます。こわいな……

 

 

 

『鬼滅の刃』最終話に寄せて

漫画『鬼滅の刃』が完結した。

2016年から4年越えの連載。追っている作品の完結をリアルタイムで見届けたのは『7SEEDS』ぶりなんじゃないだろうか。駆け抜けた達成感と終わってしまったさみしさがあまりに大きくて、きのうは深夜3時まで友だちと語り明かしてしまった。

起きて今、『鬼滅の刃』最終話を読み終えたこの感情を、記さずにはいられないと思ってこれを書いている。


※思いっっっきりネタバレを含みますので、アニメ派の方、単行本の方、もろもろ原作未読のかたはお気をつけください。
(わたし自身が基本地雷なしなんですが唯一めちゃめちゃショックを受けるのが意図せずネタバレを踏んでしまったときなので……うっかりかなしい思いをさせたくないので………)

 

▽前書いた鬼滅関連記事

 


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いきます。

 

 

 

 

 


ついこの間の20巻発売段階で23巻までの発売日が発表されたり、物語が佳境に入ってきたりしていることもあって最終回が近いのではと薄々感じてはいた。いたけれど、いざこうしてしっかりと完結をむかえてみるとなかなか胸に来るものがあった。

 

とてもいいラストだったと思う。正直、先週で『鬼滅の刃』はもう完結していたと言ってもいい。ラスボスである無惨は見事退治され、悪鬼はいなくなった。炭治郎も禰豆子も無事人間に戻り、怪我を負った隊士たちの傷は癒えた。鬼殺隊は解散し、それぞれ家へ帰り平凡な日々を送る。今までの過酷で苦しい闘いは過去になった。大団円だ。

でも、そのあまりの大団円ぶりを唐突な幕切れだと思わなかったわけでもない。あそこまで、あそこまで壮絶な闘いを繰り広げたのに、こんなにあっけなくすこやかな日々が描かれていいのか。生き残った隊士たちみんなに帰る家があるわけではないのではないのか。痣が出現したものはみんな25歳で死んでしまうのは本当なのか。じゃあ実弥は、義勇は、炭治郎は、鬼がいなくなった世界でも長生きはできないのか。

無惨が探していた「青い彼岸花」の在処は不明のままだった。なぜ炭治郎の家系に日の呼吸が継承されたのかも、そもそも「始まりの剣士」である縁壱がなぜ人間離れした強さだったのかも、明言されてはいない。

つまり、腑に落ちない点が残らないといえば嘘になる。それでも、やっぱりこのラストを超えるラストはなかっただろうと思うのだ。


ONE PIECE』を超え『ドラゴンボール』を超え、『鬼滅の刃』は社会現象を巻き起こした(まさに今も巻き起こし続けている)。地名度が上がれば上がるほど、周囲の期待は高まる。物語がおもしろければおもしろいほど、その行く末を見守る人間の数は増える。わたしだってそうだった。毎週の展開に一喜一憂し、月曜日がくるのがこわいと思いながらもジャンプ更新を5分前からスタンバイするほどまちどおしかった。『鬼滅の刃』がそれほどまでに人気になったのは、ひとえに設定のブレなさとリアルさ、そしてキャラクターの掘り下げと構成力が素晴らしかったからだと思う。

 

鬼滅の刃』では、とにかく登場人物たちの生死が約束されていなかった。ありがちな「このキャラは死なないだろう」という絶対的安心感がひとつもない。ほとんどのキャラに共通する、鬼を倒すためなら自分の命は落としてもよいという自己犠牲と屈強な精神。「この漫画油断できないぞ」と読者がとくに警戒心を高めたのは、炎柱である煉獄が登場まもなく命を落とした回だと思う。わたしもはじめて読んだときは衝撃だった。これから炭治郎たちのよき指導者になってくれるんだろうな、と思っていた矢先の絶命。えっっ、まってくださいこのレベルのキャラがここで死ぬんですか嘘過ぎでは???(ガチでした)

その後遊郭編での闘いでは、音柱の宇髄が片腕と片目を損失。死こそ逃れたものの、柱は引退することとなった。刀鍛冶の里では誰も欠けることがなくホッとしたのもつかの間、無限城での闘いはお館様の死を持ってはじまり、上弦の弐戦ではしのぶさんを、上弦の壱戦では無一郎と玄弥を、そして無惨線では大量の隊士と3人の柱をうしなった。(書けば書くほどしんどさが増してくるな……)

上弦の壱戦あたりから、もはや誰が生き残り誰が死ぬのか、といった生死の行方を展開と合わせて気にするようになっていた。義勇が片腕をなくし、悲鳴嶼が片足をなくす。実弥は吹っ飛ばされ瓦礫に埋もれ、伊黒は顔面に大きな傷を負う。もうやめてくれ、と何度も思った。やっと無惨を倒したと思ったら炭治郎が鬼化。もうやめさせてやってくれ。せめて人間のまま死なせてやってくれ。(この回のときの義勇さんほんとしんどかったし実弥はスウスウ寝てくれていてマジでよかった)

そこまで残酷で強烈で不条理な死と隣り合わせの闘いを描きながら、くるりとみんなが笑い合うハッピーエンドを持ってきた。これは、すごいことだと思う。


鬼滅の刃』は最初から人の想いをつなげていく尊さをテーマにしていて、それは一貫してブレなかった。縁壱から炭吉へ、炭吉から竈門家代々へ、鬼殺隊へ、そして炭治郎からその子孫へ。炭治郎が無惨を倒せたのは、炭治郎自身に素質があったからというのはもちろん、みんなの想いが受け継がれたからなんだと思う。死んでしまったみんなの腕が炭治郎の背中を押し上げるシーンでは、力強さとやさしさに泣かずにはいられなかった。

無惨の探し求めた「青い彼岸花」は、先にも述べたようにあいまいなまま所在は明かされていない(最終話、おそらく伊之助とアオイの子孫であろう青葉が研究していたようだが、結局すべて枯らしてしまったらしい。まあでも一年に数日昼間だけ咲くなら鬼たちはどうせ見つけられなかっただろうな……)。広げた伏線が未回収だという不満の声も見かけたが、結局「青い彼岸花」を求めていたのは無惨だけだった。無惨の想いは継承されることなく途絶えたのだ。

しかし炭治郎たちの想いは、願いは、この先もすこしずつその姿を変えながら受け継がれてゆく。

短命と言われていた産屋敷さまが現代も生きているように(本当によかったね…)、もしかしたら痣者たちの未来も変わったのかもしれない。無惨戦で生き残った人々がどのような生涯を送ったのか明記されていないからこそ、彼らの余白を感じながら現代までの軌跡を思い描くことができる。

ひとつだけ、やはり愈史郎の今後は気になるところ。茶々丸とともに今も珠世さんを描きつづけているのは、彼女を忘れたくないからなんだろう。みんな(とは言ってもずっと見守ってきたみんなではなく、彼らの子孫や転生後だけど)と違って、愈史郎だけ本人なんだよなと思うとヴ、としんどくなる。生き続けてほしいというのは祈りというより呪いに近い気もするんだよな。愈史郎は人間に戻る薬を試さなかったのだろうか。

 

最後のページにみんなの写真が飾られていて、この写真だけで昨晩1時間近く語ってしまった。なんていうかもう、感無量だった。写真にうつるみんなの表情をみて「あ〜ほんとうにおしまいなんだな」と思ったから。鬼がいなくなった世界で、みんなそれぞれ生涯を生きたのだろう。

 

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最終話を読み終えて、感情昂ぶったまま書きなぐったので拙いところや意味不明な箇所もある感想になってしまったと思うけれど、ほんとうに心の底からおもしろい作品だった。

 

これからまた煉獄外伝が始まり、10月には無限列車編の映画も公開される。12月まではコンスタントに単行本も発行されるし、まだまだ鬼滅ブームは終わらないだろう。

それでも人気絶頂の今、こうして物語を完結させてくれた吾峠先生本当におつかれさまでした。素晴らしい作品をありがとうございました……!!!!!

 

 

わたしはひとまず7/3に発売される小説版、風の道しるべを読むまでは死ねません。風柱になる男がどのように導かれたのかを読むまでは……。

 

ア〜〜〜〜〜〜終わっちゃったんだな〜〜〜〜〜!!!!!(情緒不安定)

 

 

 

しあわせにならなきゃだめだ ずいぶんとかなしい顔でわらうあなたは

P.S. 推し、あなたはしあわせになりましたか(転生後の名前明かされないのよかったな…どうして今世でもそんなに傷だらけなのかは気になるけど、指ちゃんとくっついてるの見て号泣しちゃった)

風光る

やりたかったことがどんどん叶っていくのが、うれしいと同時にすこし怖い。どこかで帳尻を合わせるように不幸になる気がすると言ったら、今までの努力の結果なんだからちゃんとよろこびな、と笑ってもらえてびっくりするほどストンと救われてしまった。

 

見てるか、去年のわたし。聞こえてるか、一昨年のわたし。

 

日記をつけていてよかったと、こういうときに思う。どれだけ後ろ向きになってもマイナス思考になっても、けっきょく自分をどうにかしてあげられるのは自分だけだとすっぱり信じることができたから。やりたいことをやるために、やりたくないこともずいぶんとした。近道はなかったにしても、かなり遠回りをした。つらかったししんどかったし、自分のことを嫌いになった。「ぜんぶ無駄じゃなかった」なんてきれいにまとめることはできないけど、それでも、認められなかった過去を思い返して昔ほど心臓が痛むことは少なくなった。


仕事を片付けたあと、トッピング用のチョコチップをつまみにビールを飲んだ。
あしたは大学時代のメンバーでオンラインのみをする。

買い出しに行かないといけないな、と空っぽの冷蔵庫をみて思った。

 

 

生き延びてこれたんだなあ風光る日々をなぞって大人になった 

 

 

P.S. 酔の助が閉店してしまうらしい。すごくかなしい。また行こうねと言ったきり、二度と行けなくなってしまった。

 

しかくいバターはすぐ溶ける

5月。家に引きこもるようになって、あっという間に1ヶ月がたった。

毎日ぬるりぬるりと時間が過ぎていく。飽きたとかつまらないとかはもちろんだけど、約束ができないことがこんなに精神をえぐるものだとは思わなかった。

 

明日もひとつ、予定していたコンサートがなくなった。一階席のけっこういいところが当たっていたんだけどな。一緒にいく予定だった人と「また今度だね」と笑いながら、「今度っていつなんだろうね」とは言わなかった。そんなことを話してもキリがないから。

オンラインのみはたのしい。ちょこちょこ乱入がある画面の向こうの家族やペットに癒されるし、お店で飲むよりだんぜんコスパもいい。でも、会ってるのに会いたいな、と思う。ちいさな相づちとか、自分は吸わないタバコの匂いとか、全然好きじゃない帰りの終電の空気とか、そんなものがぜんぶ懐かしくなる。

 

今朝、ほんとうはすでにみんな死んでしまって、世界にわたしだけ取り残されていたという安っぽい映画みたいな夢を見た。よく考えてみればとんでもなくずさんな作りだったのに(引っ越す前の部屋に住んでいたり、小学校の友だちと大学の友だちに面識があったり)、夢の中のわたしはすっかりそれを信じていて、目が覚めてからもすこし混乱していた。意味もなく友だちにラインを送るなんて、わたしこんなキャラじゃなかったのにな。頭がしっかりしてから、すこし笑った。

 

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ホットケーキミックスがめちゃくちゃ高値で転売されているらしい。ホ〜と思いながらコンビニに公共料金を払いにいったら普通に売っていて、思わず買ってしまった。実家にいるときはよくホットプレートで焼いたもんな、とウキウキ家に帰って、ここは実家ではないことを思い出す。(ホットプレートがない。)

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フライパンでいけるか!?とハラハラしながら焼いてみたら、案外まるっときれいに焼けた。しかくいバターをのせる瞬間がいちばんわくわくした。2枚食べてお腹がいっぱいになって、ラップに包んで冷凍庫に入れた。今日、残りを朝と昼に食べた。昨日の方がおいしかった。

 

 


現像を忘れた記憶 思い出すことがこわくて笑って暮らす